父が亡くなって丸3年。
92歳だったから、十分長く生きたと言えるだろう。

一言で言うと、とにかく真面目な人だった。
公務員だったのだけど、お酒も飲まないし、喫茶店に寄ることもなく、仕事が終わるとまっすぐ帰ってくるので、父が帰ったら時間がわかるっていうくらい毎日同じ時刻に帰宅してた。

几帳面で曲がったことは許せない。
常に自分の物差しがあって、それに外れると厳しかったなー。
自分にも厳しかったけど人にも厳しかった。

栞子のことをとても大切にしてくれていたことはわかってるんだけど、枠にはめられて枠からはみ出すことは許されなかったような感がある。

父に意見を言うことなんて考えられなかった。
黒いものでも父が白と言えば白と言うか、または黙るしかなく、なかなか会話が成立しなかったのよ。
たまーに、止むを得ず行かなければならない職員旅行なんかで留守だと、心がゆったりして気楽に過ごせたものだ。

でも、根っこの部分はとっても優しい人だったんだと思う。
飼っていた犬もすごく可愛がってたし、庭に来る鳥にパンくずをやったりもしてた。
何より草花は丹精込めて育てていた。
どうやら人間とのコミュニケーションが苦手だったらしい。
いや、「らしい」ではなく明らかだ。 

頭は最後まではっきりしていたのだけど、膝が悪くなって動けなくなり、病院と施設を行ったり来たりの生活になった。
栞子が行くと、何も言わず常に涙を流してた。
今も時々あれはどういう涙だったんだろうって考えるけど。

知識の豊富な人だったので、ちゃんと喋ったら面白かったのではないか、娘としてもっと違う接し方があったのではないかと思うこともあるけれど、まぁ仕方ない。

どうしたって、そういう思いは残るものなのだろう。


<夏至の夕暮れ>
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