ガチでインドア派の栞子だけど、登山に対する憧れは抱いていた。
過去1回だけ、高校時代に2000m足らずの山に登ったことがあるのだけど、山頂に着いた時の達成感や爽快感が忘れられないでいる。
<頑張って冬越ししたアメリカンブルー>
今から15年ほど前に、シニアが中心の同好会に誘われたんだけど、その時は装備にお金がかかりそうで踏み出せなかった。
いつかは…と思いながら、登山に耐えられる体を作る時期も逃してしまった。
「いつか」は絶対来ないというのを身をもって示したわけだ。
この本は5年ぐらい前に1度図書館で予約していて、順番が回ってきた時に旅行中で流れてしまい、そのままになっていたのだけど、この間図書館をウロウロしていて見つけたので借りてきたの。
8月の6日間の出来事だけが描かれているのかと思ってたら、「9月の5日間」だったり「2月の3日間」だったり、主人公が山に入った数日間のことが描かれている。
北村薫さん、名前は知ってるけど作品を読むのは初めてだ(たぶん)。
とても綺麗な文章だなーという印象。
ごく自然に、与えられることによって、わたしも与えたのだ。喜びは、片方にあるのではない。その間にある。(p.91)
これは登山とは関係ない場面だけど、なんかじんわり沁みた。
栞子の憧れを知ってるはずはないのだけど、長男が山にはまっている。
時々 横浜、雪大丈夫? などとLINEすると 山より少ないから大丈夫 とか 元気? というと 山で死にかけたけど今は元気 なんていう返事が返ってくる。
事前に彼の登山計画などを知ると心配MAXになるので、あえて聞かない。
インスタを盗み見して「あー、登ってたのか。無事に帰ってきたのか」と思う程度にしている。
この作品に出てくる蝶ヶ岳、常念岳、燕岳、槍ヶ岳などは彼も登ったらしき山々で、とても親しみがわいて、自分は1mmも登ってないのに、興味深く読んだわ。
あと、どんなに荷物が多くても必ず文庫本を入れていき「手の届くところに本がないと不安」という主人公に激しく共感。
一つだけ、実はこれは紀行文だと思ってページを開いたのだけど、主人公が女性で、一瞬「あれ?北村薫さんて女性だったっけ」と自分を疑ってしまった。
慌てて後ろを見てみたら、「この作品はフィクションであり…」とちゃんと書いてあった。
この作品を真似して安易に山に登らないように的な注意書きもあったわ。